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チョコレートプラネット

チョコレートプラネット「クレーム」— 昔話を真剣にクレームするとこうなる

チョコレートプラネットの傑作コント「クレーム」。国民生活センターに、浦島太郎の恩返しがないと真剣にクレームしに行く男——この突拍子もない設定を、二人は一切ブレさせずに7分間走り切ります。

架空の昔話を現実の契約問題として扱う男と、事務的に対応しようとする職員。この前提のズレが生むディスコミュニケーションが、亀への架電、昔話の非実在性の判明、そして桃太郎・笠地蔵・かぐや姫への疑念連鎖へとエスカレートしていきます。

再生回数1,000万回超えの人気作。笑いの配置を測ってみると、終盤ほど密度が上がるという興味深い構造が見えてきました。どこがそんなに面白いのか、数字と一緒に紐解いていきます。

文字起こし(全文)

225行 / 1,898字—
出演: A=左側の男性(頭に白いタオルを巻いた男性) / B=右側の男性(国民生活センターの松尾)
  1. Bすいません、お待たせいたしました。えー、国民生活センター対応係の松尾です。よろしくお願いいします。えー、本日はどうされました?
  2. Aいや、この前亀助けたんだけどさ。
  3. [笑い]
  4. Aなんもなくてさ。
  5. [笑い]
  6. Aほんでちょっと来たんだけど、ここであってんのかな?
  7. Bはい。
  8. [笑い]
  9. Bはい。
  10. Aいや、だから。俺が、その、海岸歩いてたの。
  11. Bはい。
  12. Aしたらガキが亀いじめてて。その亀、俺助けたんだけど。その、なんもないわけよ。うん。ほんでちょっと、ね、来たんだけど。その、対応はここでいいの?
  13. Bはい。
  14. Aうん。
  15. Bえーっと、では本日は亀を保護したいということでよろしいですか?
  16. [笑い]
  17. Aいや、亀保護じゃなくて。
  18. Bはい。
  19. Aだから、その、俺が助けた亀が、ね?そう、助けてそのままなんも言わずに海帰っちゃったのね。
  20. Bはい。
  21. Aとりあえず浜辺で2時間ぐらい待ってたんだけどさ。
  22. [笑い]
  23. Aなんもないわけよ。完全にやられちゃってるよね、これ。
  24. [笑い]
  25. Bやられちゃってるというのは?
  26. A竜宮城連れてかんかい、や。
  27. [笑い]
  28. Aいや、そのまま帰って。なんもないの。びっくりして、これもう完全に詐欺やろと思って。
  29. Bうーん。
  30. Aうん。ほんでまあちょっと対応してもらおうと、クレームでちょっと来たんだけど。
  31. Bああ。
  32. Aここであってんの?
  33. Bそうですね、ここというか…
  34. A一応印鑑と住民票持ってきたんだけど。
  35. [笑い]
  36. Bあ。はい。すいません、ちょっと…
  37. Bはい。
  38. Bはい。ありがとうございます。えーっと、本日は多分使わないと思いますので、はい。一旦しまっていただいてですね。
  39. A使わないの?
  40. Aせっかく母ちゃん取ってきてもらったのに。
  41. [笑い]
  42. Bああ、申し訳ございません。えーっと、ではあれですね。えーっと、本日は、えー、亀を助けたのに、
  43. Aうん。
  44. Bえー、何もなかった、ということですよね?
  45. Aうん。そんなことある?
  46. [笑い]
  47. Aああ。びっくりしたんだけど。いや、聞いたことある?亀助けました。助けた人、そのまま帰りましたって話。
  48. [笑い]
  49. A聞いたことないでしょ?
  50. Bうーん、そうっすね。
  51. Aびっくりしたの、ほんとに。
  52. Bうーん。
  53. A完全にやられちゃってるよね、これ。
  54. [笑い]
  55. Bああ、そうですね。やられちゃっ…まああれなんですね、あのー、竜宮城がないので。
  56. [笑い]
  57. Aえ?
  58. Bはい。
  59. Aえ、でもこの前電話したら繋がったけど。
  60. Bえ?
  61. Aなんか亀の甲羅になんか電話番号書いてあって、そこに電話したら繋がったんだけど。
  62. B電話?
  63. Aうん。お前電話して、なんかちょっと話が噛み合わなかったからさ、ちょっと今切っちゃったんだけど。これ、1回ちょっと電話してみてよ。
  64. Bはい。ちょっとお借りします、じゃあ。
  65. Aうん。
  66. [笑い]
  67. ?お電話ありがとうございます。乙姫パラダイス竜宮城です。
  68. [笑い]
  69. ?女の子のご指名…
  70. Bこれ、竜宮城じゃないですね。
  71. [笑い]
  72. Aえ、竜宮城つってんじゃないの。
  73. Bあ、竜宮城とは言ってるんですけど、竜宮城、うーん、ではないですね、その。
  74. Aどういう?
  75. Bはい、なんかこう、大人の竜宮城と言いますか。
  76. [笑い]
  77. A大人の?
  78. Bはい。
  79. Aいや、大人、大人だし。
  80. Bああ、まあそうなんですけど、ちょっとこう違うというか、はい。
  81. Aえ、なに?楽しくないの?
  82. Bまあ楽しいと言えば楽しいのかもしれないですけど…
  83. Aじゃあいいじゃん!
  84. [笑い]
  85. Bま、でもちょっと違うんですね、なんかその、はい。
  86. Aえ?
  87. Aなんなの?
  88. Bなんかあの、まずあの、恩返しみたいのがない、ので。
  89. [笑い]
  90. Aえ?
  91. [笑い]
  92. Aえ、恩返し制度なくなっちゃったの?
  93. [笑い]
  94. B制度…
  95. Aえ、それなんか組合かなんか作って、ちゃんとやった方がいいんじゃないの?
  96. [笑い]
  97. Bああー…
  98. Aねえ?
  99. Bそうですね…
  100. A亀助けて竜宮城連れてかないなんて、おかしい話だろ、お前。
  101. Bそうですよね。まあそうですね、でも、それないですし、
  102. Aえ?
  103. Bま…
  104. Aえ、なにそれ?え、え、潰れちゃったの?竜宮城。
  105. [笑い]
  106. Bまあ潰れた…
  107. A景気だ、景気。ああー!竜宮城って潰れるもんなの?
  108. [笑い]
  109. Aいや、あれだって県がやってんじゃないの?福井県かなんか。
  110. [笑い]
  111. A福井県かどっかやってんじゃないの?あれ。
  112. B違います。あのー…
  113. Aクレームか。
  114. Bえ?
  115. Aクレーム来て潰れちゃんたのか。
  116. Bうーん…
  117. Aねえ?あの、開けた、玉手箱を開けたらおじいさんになっちゃうっていうクレームがバンバン来ちゃうのかな?
  118. [笑い]
  119. Bうーん…
  120. Aいや、でもそれ開ける方がどうかと思うけどね。「開けるな」って言われてんだからさ。それ開けた奴が悪いんだよ、そんなのは。
  121. Bまあ、そういうのはでも一切…
  122. Aクレーマーだよ、そんなのは。
  123. Bそういうのはないんですけど、まずあれなんですね、あの、作り話なんですね。
  124. [笑い]
  125. Aえ?
  126. [笑い]
  127. Aえ、う、嘘ってこと?
  128. Bま、嘘ですね。
  129. Aえ、え、でも、え、だいぶ前の嘘でしょ、それ。
  130. [笑い]
  131. Bまあ嘘の…はい。
  132. Aえ、ずっとその嘘が引き継がれて、え?
  133. Bそうですね。
  134. Aやばくない?それ。
  135. [笑い]
  136. Bうーん…
  137. Aええ?
  138. Aえ、じゃ、おお、多いでしょ?俺みたいな奴、その、問い合わせ。
  139. Bえーっと、初めてです。
  140. [笑い]
  141. Aええー!?
  142. [笑い]
  143. Bはい。
  144. Bはい。
  145. A助け損か、最近の亀も。
  146. [笑い]
  147. Bうーん、なんですかね。
  148. Aクソだな。
  149. [笑い]
  150. Bそうですねえ。
  151. Aえ、じゃ、え、ちょっと待って?
  152. Bはい。
  153. Aえ、玉手箱もないってこと?
  154. Bないですね。
  155. A嘘だ。
  156. [笑い]
  157. Bはい。
  158. Aええー!うわー、玉手箱、ミキにやるつっちゃったんだけどなー。
  159. [笑い]
  160. Aいや、ミキって俺の彼女なんだけどさ。
  161. Bああ、はい。
  162. Aいや、ミキ怒るぞー。
  163. [笑い]
  164. Aこれわー。あいつ怒ったらめんどくせえんだよなー。いっつもグジャグジャ言って。
  165. Bそうっすね。
  166. Aないよね?どっか売ってない?ド、ドンキとかに売ってないの?
  167. [笑い]
  168. Bドンキも見見たことないですねえ。
  169. Aニ、ニトリ売ってなかった?なんか。
  170. [笑い]
  171. Bないと思いますけど。
  172. A売ってないか。
  173. Bはい。
  174. Aどうすっかなー。これ困ったことになっちゃった。
  175. [笑い]
  176. Bでもあれだと思うんですね、大体そういう話は作り話ですので、あの、ご理解いただけるとは思いますけど。
  177. Aえ、そういう話って、え、他、え、他、全部、他の…
  178. Bま、他のもそういうのは…
  179. Aえ、桃太郎さんとか?
  180. Bもうあれも…
  181. Aええー!?
  182. [笑い]
  183. Aえ、犬とか猿、キジいないの?
  184. Bそこはいるんですけど。
  185. [笑い]
  186. Bま、多分鬼がいないんで…
  187. A鬼のほうかい!
  188. [笑い]
  189. Bはい。
  190. Aうわー、鬼いると…え?
  191. Bはい、鬼はいない…
  192. Aえ、じゃ、え?毎年節分、え、何に投げてんの、あれ?
  193. [笑い]
  194. Bんー、なんかこう、迷信と言いますか、なんかこれ、あれはお祭りの一環と言いますか、なんかこう…
  195. Aわけわかんねえな、この世の中なんか最近。
  196. Bああ、そうっすねえ。
  197. Aなんなん…
  198. AもうなんかSNSにやられちゃってんな、なんかなー。
  199. [笑い]
  200. Bうーん、かもしれませんねえ。
  201. Aわかんねえよ、ついていけねえよ。
  202. Bそうですねえ。
  203. Bなので…
  204. Aああ、え、え、笠地蔵とか…
  205. Bま、あれもないですね。
  206. Aひどい話だ。
  207. Bはい。
  208. Aだ、え、あれは本当でしょ?あれ。
  209. Bはい?
  210. Aかぐや姫は?
  211. Bあれもそうですね。
  212. Aうっそやーん。
  213. [笑い]
  214. Bはい。
  215. Aだって俺の彼女のミキは竹から生まれたっつってんだよ、だって。
  216. [笑い]
  217. Bえ?
  218. Aミキの母ちゃんが竹藪歩いてたら、竹光ってて、そこ切ったらミキが生まれたっつってたんだ、そのミキの母ちゃんが。そのミキっていう名前も竹の幹の方だからミキって付けたって。
  219. [笑い]
  220. A言ってたんだから、それ本当だろ、お前。
  221. [笑い]
  222. Bへえー…
  223. [笑い]
  224. Bそうなんですねえ。
  225. [笑い]

分析

測定データ

項目値
尺7:02
発話文字数1,898 字 / 103 行
話速280.5 字/分
笑いの回数51 回(7.25 回/分)
初笑い0:20
笑いの間隔中央値 6 秒 / 最長 24 秒
笑いの配置(序/中/終)12 / 18 / 21
発話の内訳A 63% / B 37%(交代 146 回)

※数字は聞き落としを含むため下限の目安です。同じ出所同士で比べてください。

数字の読み

注目は笑いの配置です。序盤 12 回、中盤 18 回、終盤 21 回と、終盤ほど笑いが密になります。コントは中盤で失速しがちですが、このネタは逆で、否定が連鎖するほどテンポが上がっていく構造です。「そもそも浦島太郎は作り話」という根本からの否定(4:25 頃)以降、桃太郎・笠地蔵・かぐや姫へと対象が拡大し、それに合わせて笑いの間隔が短くなっていきます。

最長の 24 秒という空白は、電話のスピーカーから風俗店の案内音声が流れる転換点に当たります。大きな仕掛けの前には溜めがある——この時間配分は学ぶべき点です。初笑いが 0:20 と早く、つかみから間隔の中央値 6 秒という高密度な展開が始まります。

構成の読み

  • つかみ(〜1:26): 浦島太郎の恩返しがないと真剣にクレームする男が登場。0:20 に初笑いがあり、前提のズレをすぐに提示します。
  • 本題(1:27〜6:18): 亀への架電→風俗店だった→「作り話」の否定→他の昔話への連鎖、と一方向にエスカレーションします。
  • オチ(6:19〜6:50): 男の彼女がかぐや姫と同じ出自だと判明。職員が説明を諦めて受け流して暗転します。

最大の魅力は、架空の昔話を現実の契約問題として扱う男と、事務的に対応する職員の前提のズレを、最後まで解消しないことです。ボケ側が一度も正気に戻らず、ツッコミ側が徐々に困惑へ沈んでいく役割の変化も見どころです。冒頭の設定(かぐや姫への言及)がオチで回収される設計は、一本もののコントの手本と言えます。

おすすめの観どころ

2:50 の電話のくだり、そして 5:52 の「鬼の方かい!」のリアクション。前者は仕掛けの大きさ、後者は意外な線引きが生む爆発の瞬間です。ぜひ通しで観て、終盤に笑いが積み上がっていく感覚を確かめてみてください。

出典・測定元

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