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サンドウィッチマン

サンドウィッチマン「救急車」— 一つの設定を交代と反復で磨く4分

2012年のM-1決勝でも披露された、サンドウィッチマンの代表作「救急車」です。グレープカンパニーの公式チャンネルで観られるこの4分、再生数は1,700万回を超える人気ネタ。内容は、倒れた人を発見して119番通報する練習という、たった一つの設定を二人のロールプレイで押し通す漫才です。

見どころは、前半と後半で役割を交代させる構成。前半は富澤が倒れた人を発見する側として、携帯を忘れる、117にかけると番号を間違える、と通報プロセスを一つずつ崩していきます。後半は伊達が指令員役に回り、ピザ屋のような挨拶や「ダンシング谷村」という聞き間違いで、今度は受ける側がボケます。

そして最後は「パニック」を「パナソニック」と言い間違えるオチで締め。派手な大仕掛けは一切なく、設定の純度とテンポだけで笑わせ切る、王道漫才の完成形です。

文字起こし(全文)

224行 / 1,281字—
出演: A=左側の眼鏡をかけた男性 (伊達) / B=右側の開襟シャツの男性 (富澤)
  1. [拍手]
  2. Aどうもどうも。えー。
  3. Bお願いします。
  4. Aようこそおいでくださいました。ありがとうございます、本当にね。
  5. B嬉しいっすね。
  6. A嬉しいね、こうやって満員、4公演全部満員ですよ。
  7. Bそうですねー。
  8. Aねー、ありがとうござい…
  9. Bでも、ちょこちょこ空いてますけどね。
  10. Aま、ま、ちょこちょこ空いてますけどね。
  11. [笑い]
  12. A急用とかあるでしょう、色々。
  13. Bねー。
  14. Aええ。
  15. Bええ。
  16. A嬉しいじゃないですか、でも。はい。
  17. Bあの僕、この間ね、あの尿路結石になりまして。
  18. Aあー、やってたね。
  19. Aあんたの尿道から石がポンポンポンポン出てきたんだろ?
  20. Bそんなにポンポンポンポンは出てないっすよ。
  21. [笑い]
  22. Aね。
  23. Bマシンガンじゃないんだからね。
  24. A出てない?
  25. B出てないですよ。
  26. A痛いんだろ? あれ。
  27. B痛いんです。すごい痛い。
  28. Aすごい痛いって聞くわ。
  29. Bだから、結構あれで救急車呼ぶ人もいるんだって。
  30. Aまあまあ、いるでしょ。それくらい痛いってわけだからね。
  31. Bでね、僕らも分かんないじゃないですか。いつ目の前で人がこうやって倒れるか。
  32. Aまあまあ、もちろんね。
  33. Bだからそういう時に焦んないように、ちょっと救急車呼ぶ練習しときたいなと思わない? 思うよね? よし、やってみようよ。
  34. [笑い]
  35. Aなんなんだよ、お前。
  36. Aなんなんだ、お前1人で。
  37. Bあ、人が倒れてる。
  38. Aうん。
  39. B大丈夫ですか? 大丈夫ですか?
  40. Bあ、そうですか。
  41. B大丈夫だって。
  42. A大丈夫なのかよ!
  43. [笑い]
  44. A大丈夫じゃない体でやれよ!
  45. B大丈夫じゃない?
  46. A何の練習にもならねえだろ、これ。
  47. Bあ、人が倒れてる!
  48. B大丈夫ですか?
  49. Aこっち見んな、一々、お前。
  50. [笑い]
  51. Bあの、今、救急車呼びますんで。
  52. Bしまった。
  53. B携帯を忘れてきた、こんな時に。
  54. Bはあ。
  55. Bどうしよ…あ、そうだ。嫁さんに電話して持ってきてもらおう。
  56. [笑い]
  57. B携帯を忘れたんだ…
  58. Aのんきか!
  59. [笑い]
  60. Aお前、のんきか、お前。
  61. A見安のんきか、お前。
  62. [笑い]
  63. B見安?
  64. A見安のんきかっつってんだよ。
  65. B見安?
  66. A見安に引っかかんな、お前、そんなん。
  67. Aなんで携帯持ってる体でやれよ、お前。
  68. B持ってる?
  69. A一歩も進まねえよ、お前、そんなの。
  70. Bあ、人が倒れてる!
  71. Aなんでちょっと笑ってんだよ、お前。
  72. B大丈夫ですか?
  73. Aすぐ行けやすぐ、お前。
  74. B救急車…
  75. B117。
  76. A時報だよ、それ、お前。
  77. [笑い]
  78. A117、時報だろ。119にかけるんだよ。
  79. B119に。
  80. A「に」いらねえんだよ、お前。
  81. [笑い]
  82. A鎌倉幕府か、お前。
  83. [笑い]
  84. A119。
  85. B119。
  86. Aうん。
  87. Aなんでテレビ電話なんだよ。
  88. [笑い]
  89. Aすっと出ろよ、すっと、お前。
  90. A出てやるから、俺が。
  91. B119。
  92. Aうん。
  93. Aガチャ。「はい、119番です。火事ですか? 救急ですか?」
  94. B「いや、富澤です」
  95. [笑い]
  96. Aいや、名前聞いてないです。
  97. [笑い]
  98. A火事か救急か聞いてますよ。
  99. B「あ、急病人です」
  100. A急病人。
  101. B「人が倒れてるんです」
  102. A「人が倒れてる? 状況を教えてください」
  103. B「はい」
  104. B「えーっと、あの詳しい状況分かんないんで、一度持ち帰っていいですか?」
  105. [笑い]
  106. A営業マンか、お前!
  107. [笑い]
  108. A持ち帰るな! 見たまんま言ってくれればいいんですよ。
  109. Bあ、見たまんま。
  110. A「出血とかどうですか?」
  111. B「あ、血は出てないですけど、出した方が盛り上がりますか?」
  112. [笑い]
  113. B「はい」
  114. A盛り上がらねえよ!
  115. A大日本プロレスか、お前。
  116. [笑い]
  117. Bすいません、すいません。
  118. B「キャッ、キャッチ入っちゃったんで、1回切りますね」
  119. [笑い]
  120. A何やってんだよ、お前!
  121. [笑い]
  122. Aなんでキャッチホン優先してんだよ、お前。
  123. Aおかしいだろ。
  124. Bおかしい?
  125. A一大事だよ?
  126. Bうん。
  127. Aなんでキャッチホン優先してんだ、お前。
  128. B向いてないのかもしれないなー。
  129. A向いてないのかもしれないな、じゃねえよ!
  130. B難しいわ。
  131. Aおかしいわ。
  132. Aじゃ、俺、俺がやってやるよ、じゃあ。
  133. Bお。
  134. Aお手本見してやるよ。
  135. Bあ、ほんと?
  136. A俺、1回救急車呼んだことあるもん。
  137. Bあ、そうなの?
  138. Aうん。
  139. Bじゃあ俺、電話出るから。
  140. Aうん。
  141. A「お」
  142. A「人が倒れている」
  143. A「電話しとこうか」
  144. B余裕あんな。
  145. Aピッピッピッ。
  146. B「お電話ありがとうございます。119番…」
  147. A「お電話ありがとうございます」とかいらねえんだよ!
  148. [笑い]
  149. Aピザ屋か、お前。
  150. B「ピザですか? 救急ですか?」
  151. A「火事ですか」だろ!
  152. [笑い]
  153. Aなんでピザ売ってんだよ、そこで。
  154. Aいや「急病人に急に人が倒れてんだよ。救急車!」
  155. B「あ、そうですか」
  156. A「うん」
  157. B「あの、状況を教えてください」
  158. A「状況ね。あの俺が歩いてたのよ、道を」
  159. B「はい」
  160. B「歩いてた」
  161. A「そしたら男性が倒れてたのよ」
  162. B「ダンシング谷村がいた?」
  163. [笑い]
  164. A言うか、そんなこと!
  165. [笑い]
  166. Aダンシング谷村ってお前、セロハンテープ顔に貼り付けてお前、
  167. A谷村新司のモノマネ…そういう人じゃねえか、お前。
  168. [笑い]
  169. B「ちょっと何言ってんのか分かんないですけど」
  170. [笑い]
  171. A分かんだろ、それ!
  172. A分かんないやつ、この言葉出てこねえんだよ!
  173. [笑い]
  174. Bえ?
  175. A「いや、だから人が倒れてんだよ」
  176. B「あ、そうなんですか。あの、谷村さん…」
  177. A「谷村さんじゃねえよ!」
  178. [笑い]
  179. A「伊達っつってんだよ、俺は!」
  180. B「あ、そうなんですか。あの、倒れてる男性なんですけど、呼吸はありますか?」
  181. A「はいはい」
  182. A「呼吸はね、息をしてるね」
  183. B「あー、よかった。意識はありますか?」
  184. A「うん」
  185. A「意識、まあ『痛い痛い』って言ってるからあるんじゃないかな」
  186. B「あー、よかったー! 出血はありますか?」
  187. A「うん」
  188. A「出血はしてないみたいだな」
  189. B「よかったー!」
  190. [笑い]
  191. A「『よかった』じゃねえんだよ! 何も良くねえんだよ。救急車早くよこせよ!」
  192. B「向かったー!」
  193. [笑い]
  194. A「向かってねえだろ、お前!」
  195. [笑い]
  196. A「絶対向かってねえよ、住所も何も言ってねえんだから、お前!」
  197. [笑い]
  198. B「あ、そうですね。住所をお願いします」
  199. A「いや、住所これ新宿なんだけど、ちょっと分かんないんだよね、外だから住所が」
  200. B「はい」
  201. B「あ、そうですか。じゃ、目の前になんかこう目印になるような大きい病院とかないですか?」
  202. A「あったら俺が連れて行ってるよ!」
  203. [笑い]
  204. A「早く救急車よこせよ!」
  205. B「あ、分かりました。じゃ、今から鍵の救急車そっち向かわせ…」
  206. [笑い]
  207. A「なんで鍵の救急車来んだよ!」
  208. [笑い]
  209. Aちょっと待てよ、お前。
  210. A俺、どこに電話してたんすか?
  211. Bはい?
  212. Aなんで鍵の救急車来んだよ、お前。
  213. A焦るよ、これ。
  214. A人倒れてんのに合鍵作られても困んだよ、そんなもん、お前。
  215. [笑い]
  216. Aおかしいでしょって。
  217. Bパナソニックになって…
  218. Aパニックだろ!
  219. [笑い]
  220. Bパニックになって…
  221. A電気メーカーになってどうすんだよ。おかしい、パニック。
  222. Bパニック。
  223. Aうん。
  224. Bちゃんと呼べないっすね。

分析

測定データ

項目値
尺4:03
発話文字数1,281 字 / 68 行
話速324.3 字/分(有声ベース 357.7 字/分)
笑いの回数37 回(9.14 回/分)
初笑い0:16
笑いの間隔中央値 4 秒 / 最長 25 秒
笑いの配置(序/中/終)7 / 13 / 17
笑いの大きさ中央値 +11.7 dB / 最大 +17.2 dB
話者交代131 回 / 最長の一人区間 13 秒

読み

注目は笑いの配置です。序7・中13・終17と、終盤に向かって笑いが増えていく設計になっています。前半は「117(時報)」「1192(鎌倉幕府)」と番号を間違えるボケを細かく刻み、2:28前後の役割交代を転換点に、後半は指令員の理不尽な対応で笑いを加速させます。大きな笑いのピークは2:15〜2:18の「キャッチが入ったので切る」と、2:55〜3:01の「ダンシング谷村」の聞き間違い。どちらも後半にあり、測定の「終17」ときれいに符合します。

初笑いが0:16なのも見事です。尿管結石の体験談というつかみで、観客は冒頭16秒で既に笑わされている。その余裕があって、本題のロールプレイに入ったとき観客は安心してボケを待てます。

もう一つはテンポです。話者交代131回、最長の一人区間13秒。4分間でほぼ途切れなく二人の声が入れ替わる、掛け合いの密度がこの漫才のエンジンです。オチは「パニック」を「パナソニック」と言い間違えるだけの、最小のズレ。仕掛けの大きさより、設定一つを交代と反復で磨き上げる構成力が光る一本です。

出典・測定元

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